科学的思考(事実の積み重ねの思考)による事故再発防止へのアプローチを学んだ気分になる?  JAL123便墜落事故 自衛隊&米軍陰謀説の真相 杉江 弘 (著)を読む

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JAL123便墜落事故 自衛隊&米軍陰謀説の真相 杉江弘 著 宝島社 2017-12-18

■非常に色々と考えさせられる・・・

ど素人の人間でも、航空機事故に対する考え方の基本を示してくれる一冊。

巷にあふれる、JAL123便撃墜説、政府/自衛隊による証拠隠滅説などいわゆる陰謀論を一蹴してしまう「科学(事実)に基づく」省察を重ねて行く筆致は非常に説得性があった。

自己の唯一の「物的証拠」であるブラックボックス。

そのブラックボックスの中身はFR(フライトレコーダ)とVR(ボイスレコーダ)である。

FRによると、事故発生のとき、事故発生の瞬間は「機体はまっすぐ進んでいた・直進」していたことが明確に記録されているとのこと。

ミサイルや、その他の飛翔体が衝突すれば、「機体は(多かれ少なかれ)必ず進路が振れる(揺れる)」はず。つまり、記録からは「外部からモノが当たった形跡は一切無い」ということ、そう、ミサイルなどによるものではありえない、ということだ。

筆致が、いたずらに事故原因からの責任論のみに終始するものではなく、事故原因のみに拘泥するものでもなく、そこからの「再発防止」への視点が何より重要であるというところが、心に訴えて来る。

JAL123便の事故により、想定外の状況が起きた時に、「パイロットとして踏まえておく知識や技術」。そして、「それへの訓練」が必要であり、何より重要であるとの主張も素直に首肯できる。


日本人の場合、責任の所在、「誰が(何が)悪かったか」を明確にする/追及する点は厳しいけれど「原因が特定」「悪い人(責任の所在)が明確になれば」それ以降はあまり具体的に問題視されないという傾向がある。

私はこの点も非常に頷けるものがあった。

例えばある犯罪があり犯人が逮捕されることで「その事件は解決」という視点で見られがちだ。しかしながら「事件の解決」とは、犯人が逮捕されることも勿論だが、その後の裁判で、「なぜ犯行に及んだのか」等の背景が明らかになり「真の原因要因が特定」され、さらに「(人的被害なら)被害者への謝罪及び保証」、「(物的被害なら)その弁償」があってはじめて解決であろう。

そういう意味では、巷の数多の事故原因・責任論にのみ特化する姿勢の陰謀論に素直に首肯出来なかった自分には、非常にしっくりくる著作であった。


ただ、陰謀説そのものは真っ向から「ありえない」と否定するも、政府やJALが生存者救出に対する努力をせず、「生存者を見殺しにした」と主張されている点は押さえておくべきだろう。

また氏が、JAL123便の事故原因から再発防止策を講じられたとしても、再び123便の事故が再現したら同様の結果となるかもしれないと警鐘を鳴らされている点にも注目すべきとも思う。

示唆に富む、科学的思考態度の勉強になる一冊。

■重要(論)点
1点だけ、この作品における注意点・留意点があるという事を指摘する必要がある。

それは、
・VR/FR(ボイスレコーダ/フライトレコーダ)の記録の真実性
である。

これ、VR/FRが真実である・・・ということが、本作品の大前提となっており、それが担保されないことには、陰謀論が論外ということがそもそも成り立たない・・・ということでもあるということだ。

どういう状態であれば、どういう状況だから、これらのデータは真実/無改ざんである、という定義が欲しいとは思う。

それ(VR/FRの真実性)が無ければ、そもそも議論が成り立たないのだから・・・・
(ただ、VR/FRの真実性を担保するのは、政府でありJALであり事故調の側にあるのではないかと強く思う)