鮨 かん壱
札幌でも屈指の人気である鮨一。ススキノでも札幌の中心部でもなく、北区新川という札幌のはずれの部分でひそかな人気を博している鮨店があるということは、人づてに聞いていた。
今日はその人気店から独立した大将のお店に来れるということで、ちょっと期待していた。
隠れ家・・・とでもいうようなエントランスを抜けると・・・目の前には、いかにも鮮度の良さそうなネタが並ぶ・・・
シンプルなセットに、期待が高まる・・・
【きんきの煮つけ】
まずは「きんき」から始まる。脂の乗りが凄まじく旨味の塊という雰囲気。
【からすみ】
ねっとりと濃厚な味わいのからすみ。薄切りにして、サッと炙られ香ばしさが素晴らしい。
【かに茶碗蒸し】
「カニだけで作った茶碗蒸しです」と大将が嬉しそうに語る一品。確かに大きなタラバガニの身がたっぷりと盛り込まれ、中身もカニのダシが良く出ている。「ね、カニの味しかしないでしょ?」と、大将が「美味しい」と言う一言を求めるのも珍しく面白かった。
【大トロ】
大間産のトロ、とのこと。のっけからメインイベンターの登場?それでなくても旨味がたっぷりな素材に、丁寧て美しい飾り包丁が入れられ、その切れ目にスッと入り込んだ煮切りの爽やかな味わい。
やや固めに炊き込だシャリはふんわりと握られ、身の柔らかさと絶妙にバランス。これ以上シャリが柔らかくても、トロの身が柔らかくても、この味は出ないのだろう・・・恐るべきバランスの一貫。
【中トロの漬け】
同じく大間産の中トロ。そのまま食べても十分すぎる素材をサッとタレにくぐらせただけの、いわば浅漬けの中トロ。やはり身のやわ辛さと握りのバランスが最高で、口の中で「ほどける感覚」が計算されつくした一貫。口にすると、しばし言葉を失う。
【漬け焼き】
初めての味。中トロの漬けを焼いたシロモノ。握りの間にツマミが挟まれる構成は、ちょっと新鮮。
【ホタテ】
これは野付半島産とのこと。生のホタテは歯ごたえがややキツく感じられ、私はホタテは(グルタミン酸が出る)むしろ冷凍ものの方がこなれていて好きなのだけけれど、これは違う。
包丁の入れ方が秀逸で、固さを感じない。そして、これまたふんわりと甘い煮切りが味をうまくまとめてくれる。参りましたの一貫。
【甘エビ】
この甘エビ、凄い。甘エビなんだけど、ボタンエビのような味の濃さ。一級品の甘エビはこんなに味が濃いんだと初めて知った。これまた、丁寧な握り方と煮切りのバランスで普通の甘エビとは全く別物の味わい。
【たこ頭】
タコには柑橘は本当に良く合う。ともすると荒っぽくて臭みが出そうな食材なんだけど、あら塩とユズ皮で、さっぱりと非常に上品にまとめてもらえる一品。
やはり握りの合間に出されると印象がかなり違ってくるものだと実感。
【ほたて磯辺】
ホタテもすごいんだけど、それより何より海苔だね。この海苔が凄まじく香り、海苔そのものの旨味がものすごい。完全に海苔がホタテの旨味に勝ってしまいそうになるんだけど、炙り加減が絶妙なのでホタテの香りが海苔の香りと旨味に負けずにハモる。
綱渡りのようなバランス。どちらが勝過ぎても、この味はきっと出ないんだろうな。
【やりいか】
一貫分の身一枚がキレイに包丁を入れられて、イカそうめん風の姿となる。そこに他の握りとは違い、煮切りがたっぷりと塗られ、山わさびが添えられる。柔らかな身が細めにカットされることでさらに食べやすく、シャリとの馴染みも抜群。
【〆さば】
極限まで浅くサッと〆られ、酢の感じも昆布の香りも微か。これ以上浅いと〆た感じは恐らく無くなるだろう、そんな極限まで浅い〆。そこに柑橘系がひと絞りされている。何だろう?ゆずのような甘みは無く、スダチのような柔らかみも無い、ストレートで爽やかな酸味。え、これレモンか???
鮨にレモン????
しかし、それが何とも言えない上品な香りを醸し出し、抜群の味わいとなる。極限まで〆を浅くしているのはレモンが計算に合ったからなのだろう。こんな上品なシメサバは味わったことが無い。
【すじこ】
臭みも無く塩辛さも強くない味わいは、すじこと言うよりイクラをを彷彿させる上品さ。磯辺とはまた違う種類の海苔。今度は旨味や香りが抑え気味の種類で、ネタとシャリの旨味を邪魔しないような配慮。これまた何とも言えないバランスの良さ。
【うに】
塩水ウニ。一度まな板の上に広げ、綺麗な形のものだけを取り出して積んでくれる。やはり海苔が出しゃばらず、ウニの風味を邪魔しない。
こちらはヤリイカとは違い煮切りはごくわずか、たらすくらい。それがまた、ウニの甘さを良くひきたてる。味の技。
【甲いか】
真という文字は、酷くあいまいな使われ方をしていて、その地域で最も一般的に取れる(見られる)ものに使われるとのことだ。従って、
・真いか
という場合、北海道ではほぼ「スルメいか」を指す。しかし、瀬戸内海や九州では「甲いか」を指すのだそうだ。
このいかは甲いか。白色が強く、ねっとりと濃厚な旨味が強く、先ほどのヤリイカとは全然味わいが違う。もともとがかなり柔らかいので、短冊細切りではなく飾り包丁となっている。そこにやや多めの煮切りが身の濃厚な味をすっきりとまとめてくれている。
【コハダ】
以前、浅草の清司さんで食べさせてもらうまでは、食べる事が出来なかったネタ。(今では大好きになれたのだが)これも飾り包丁が見た目美しく、そしてその切込みに煮切りが良い具合にしみこんで、ネタとの絡みが抜群になるという仕掛け。これも味の技。
【穴子】
ふんわりと蒸しあがった穴子をひと炙り。味わい深いツメをまとって、最後にスダチをひと絞り。フワフワな食感が口の中でホロリとほどけるように崩れるシャリの食感と相まって、得も言われぬ幸せな気分にしてくれる。
【北寄貝】
生の北寄貝。私はこれ苦手であまり好きではない・・・・んだけど、「多分うまいんだろうな」と思いながら口に。案の定、その通りだった。笑
強烈でともすれば下品に強めな磯の香が苦手なネタだったのだけれど、鮮度とカット。やはり飾り包丁に沁みた煮切りとシャリの握り感がしっくり来て、絶妙の味わい。
参りました。
【海苔】
〆の巻物の代わりに海苔が出てきた。ウニ・すじこなどの軍艦を巻いていた海苔ではなく、磯辺で使われていた「強烈な味と香りの海苔」パリッと割れてフワっと溶ける。
強烈な磯の香りだけがスッと抜けて来る感じ。やっぱ、この海苔凄いわ。
【えびの味噌汁】
海老の頭の味噌汁。なんだけど臭みないんだわ。驚くほどすっきりとしていて、でも、しっかり海老の濃厚なダシは感じられて。これも匠の技ね。
何の変哲もない料理(えびの頭の味噌汁)ほど、調理者の技が出るわけなのだな。
【おまけの「剥がし」トロ】
中落ち・・・と言えば通りがよいかな。骨に引っ付いていたトロの身をスプーンでこそぎ落とした身を束ねて握ってもらったもの。ふんわりとした食感に、濃厚なトロの脂の旨味、そして煮切りがサッと塗られていることで、元来の旨味がさらに引き立つ。
いやはや、恐れ入りました・・・の一貫。
◆
私は幸か不幸か今は酒を一滴も飲まないので、(↑)こうした「鮨の微妙な味加減」をそのまま感じられるし、酔わないので、結構しっかり記憶できる。まあ、飲めなくても幸せではある。
ちょっとした包丁の入れ方や、シャリの握りの圧力の多小、そして煮切りの多少、そうした実に微妙なひと手間が和食のキモなのだと改めて感じ入った一食だった。
ごちそうさま。
今度は本家の鮨一に是非行ってみたいと思った。
鮨 かん壱
札幌市中央区大通西16-3-8 ファランドール大通
011-676-8883
12:00~14:00
17:00~21:00
日曜定休
コメント