,◆宮本 輝 愉楽の園
愉楽の園 文春文庫1992/3 759円
私の書評 ★★★☆☆(3.5)
読ませる一冊
430ページにもわたる分厚い本を、一晩で読ませられてしまった。
面白い!タイの王家の血を引く自分を愛してくれる男と、何処の馬の骨ともしれぬ、自分を確かに愛してくれるかもわからない男との狭間で揺れに揺れる美女。
それは、タイの喧噪とうだるような暑さと、独特のスパイスの香りとともに水の都バンコクで繰り広げられるひとつのラブストーリーである。
人の心と決断の礎のはかなさ
この作品では、人の心/決心・・・意思決定プロセスが非常に面白く描かれている。
一つの意思決定=「行動が起こされるにあたっての基礎となるモノ」が、実は非常に心許なく、時としてわき上がるような人いきれに気圧されてなされたり、その土地の媚薬の香りにも似た性欲によってもたらされたり、時としては、自身の考え抜いた結末として為されたりするものである。
人生の伴侶を決めるという重大な決断が、時として「えっ?」と思えるような要因によってなされてしまう事もあり、それが人間の人間たる所以なのでもある・・・という一つの例を眼前に叩きつけられて、呆然としてしまう。
感情移入しやすい私は、南国の息苦しくなるような重い湿気のある暑さの中にいつしか迷い込み、官能と喧噪の街角に佇みながら、一人の美しい女性に恋してしまった。
そして、その女性の二転三転する心理・決断と行動に翻弄される。
一気に読み終えてしまった。
宮本輝は[優駿」しか読んだことが無かったが、悪友のすすめて「春の夢」を読み、本作品も読むにいたり、稀代のストーリーテラーなのだと実感。彼に勧められなければ多分一生手に取ることは無かった本だろう。くやしいけど、感謝・・・なのである。
愉楽の園・・・この本はお薦めである。

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