◆錦繍(きんしゅう) 宮本輝
新潮社 520円
ルビンの壺が割れた・・・を読んで、「ああ、この作者は絶対にこれを読んでインスパイアされたんだなぁ・・」と思い、読み返したくなった。
ルビンの壺・・・はSNS評が高く、Amazonなどの一般書評などでの評価がとても低いと言うことは先日書いた。
こちら錦繍は、一般書評での評価が非常に高い。
SNSではTwitterでけんさくしてみた。私と同じようにルビンの壺・・・を読んで、思い出しこれを読み返した人が多かったようだ。しかし、ルビンと違って、こちらはSNSでも、概ね評価が高いのだ。
これをどう解釈すれば良いか、私にはわからない。(笑
どちらも「書簡の往復だけ」という体裁の小説。
ルビンではそれがSNS(Facebookのメッセンジャー)であり、
こちら錦繍では、それが手紙・・・であるところが決定的に違うところだ。
ルビンの評価の傾向(SNS読者は高く、書評読者は低い)に、私は、
・左脳派→分析的読書姿勢の方は評価が低い
逆に、
・右脳派→直感的毒よし姿勢の方は評価が高い
と書いた。
どちらにも比較的受け入れられる(ただ、右脳派の方の評価絶対数は少し少なかったような気がするのだが)この作品は、媒体が「手紙」という体裁だから、受け入れられるのでは無いかと思う。
決定的な違いは「比喩」なのかな・・・とも思う。
ルビンは「比喩」が錦繍に比べて少なかったのでは無いかと感じている。対して錦繍は全編「比喩」で覆い尽くされている感すらある。人生観、死生観、恋愛観、そして仕事観・・・私は「比喩」の使い手ナンバーワンは村上春樹と断じているが、村上のそれは、どちらかというとシニカルで後ろ向きなモノが多いと感じている。
対して、宮本のそれは、前向きで、どこか人生を肯定的に、一所懸命行きようトウするモノが多い気がしてならない。
そのあたり(前向きな比喩の多さ)が、右脳派にも左脳派にも受け入れられるところなのでは・・・とだ。
◆
宮本輝の代表作といえば、私は優駿だと思う。学生時代になども読んで、映画化されたときは何度も観た。彼の言葉の瑞々しさに紡がれる競馬の世界に魅了されたものだ。
宮本の作品に一貫している人間に対する暖かな視点。それが、この錦繍にも受け継がれている。
愛し合いながらも、離婚してしまった夫婦が10年後偶然再会し、それから14通の書簡を交わし合う。そんなシンプルなストーリーの中に、人の心を引きつけてやまない、男と女の「それぞれの孤独」がある。
その「孤独」を二人の元夫婦の筆を借りる形で、宮本が美しい言葉で語りあげてゆく。
分かれてから、それぞれの夫婦に絶望が訪れ、孤独となるも再会を機に、手紙の槍とを続けながら、それぞれの明日への希望にたどり着く様が嫌みの無い手紙の書き言葉で綴られている。
そえが、とても暖かみを感じさせてくれるのだ。
錦繍、良い作品である。いずれまた読み返したい。
読んだ方は是非、「ルビンの壺が割れた」も併せて読むことをおすすめしたい。

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