◆2021年8月9日(火)江別は雨のち曇り
村上春樹(著) 女のいない男たち
文芸春秋社 2014/4 2850円
私の書評 ★★★★☆(4)
◆何年も前に一度読み切ってしまっていたのだが
何気に書棚を整理していて、ふと手に止まったので、久しぶりに再読。
何気に面白かった。
この短編集のモチーフは「女のいない男たち」というものだが、全ての短編が、
「女に去られた男たち」
でもある。
また、全編・全作品において、「SEX」が陰に陽にモチーフになっているが、全ての短編で、
「女には配偶者(または恋人)がいる」
という事でもある。
前回読み切ってしまったときには、この(↑)二つのモチーフには気づいていなかった。
やたらと性描写が前面に出ていると感じたくらい・・・で。
まあ、つまらなくはない、かな。
というレベルの感想で、書棚に収まり、そのまま何年も埋もれていたというわけ。
(以下激しくネタバレします)
ドライブ・マイ・カー
亡くなってしまった美しい妻が、自分に隠れて浮気をしていた。その浮気相手と亡き妻を語り合う・・・浮気相手を激しく傷つけてやろうとする情念が、いつしか薄くなってゆく乾いた物語。結局は妻に浮気を強く問いただせないうちに亡くしてしまう男・・・・
イエスタデイ
東京生まれの東京育ちで完璧な関西弁をしゃべる風変わりな友人と、関西生まれの関西育ちで完璧な標準語を話す僕。
風変わりな友人も幼馴染ゆえ、彼女が家族のように感じられ性的な欲望がうすくなってしまう。結局は強引にいけないうちに少しずつ距離が空いてしまい、彼女をうしなってしまう男・・・(実は彼女は風変わりな男の他にも男がいて、しかもその男と寝ていた・・・事がエビローグで判明)
独立器官
女とドロドロした関係に陥る事を避けるため、夫や婚約者など決まった相手がいる女性「だけ」を相手にする美容整形外科医。絶対に相手の女に深入りせず、女を愛するのではなく、共に過ごす時間をのみ愛していた主人公。しかし、思いもかけず(ろくでもない)女に身も焦がれるほど恋に落ちてしまう。女(のろくでもなさ)に打ちのめされ、結局は消え入るように静かに自死してしまう男・・・
シェラザード
なぜか、どこか、どうしてかは明らかにされないのだが、ある空間(家?)に閉じ込められた男が、身の回りの世話に来る女から性的な関係を結んでいる。既婚女性で彼と関係を終えると子供と旦那の食事を作りに帰る。その女の異常な(犯罪的)恋愛話に半ばゾッとさせられながらも、結局は女が去ってしまう事を怖れるしかない男・・・
木野
自分の妻の浮気の性行為をまともに目撃してしまった口数の少ない営業マン。静かなバーを開き落ち着いた生活を手に入れかけるも、謎のカップル(夫婦?)の女性にかき乱される。居着いていた猫がいなくなると同時に、バーには蛇が入れ替わり立ち代わり現れるようになり、男は帰りの見えない旅に出ることになる。結局は、この女との関係は、なし崩し的に失われてしまう・・・・(やはり女には夫か恋人が存在。その男は女の全身に火のついた煙草を押し付けていた・・・)
女のいない男たち
夜中の1時。突然電話が鳴り、女が自殺したことが告げられる。電話の主はその女の夫。その女とは確かにある時期関係していたことは間違いない。しかし、夫が私の電話番号を知っているわけが無いのだが・・・結局は全ては女しかわかっておらず、私には何もわからないまま、ただ女を自死でうしなってしまう・・・
すべての物語で、男は(相手の存在する)女に翻弄され、結局はなすすべなくその女を失ってしまう・・・という物語集。
女のいない男たち・・・であり、
女を失った男たち・・・の物語。
村上の作品の中でも、特異な一冊と思う。
それぞれが、特徴があって非常に面白かった。
◆
そして、読み終わって、今、知った。
冒頭1作目の「ドライブ・マイ・カー」が何と映画化され、再来週(8月20日)ロードショウ開始だと!
心底びっくりした。
偶然、本当に偶然読み返したのだけれど・・・・
本に呼ばれたか?招かれたか?
これは映画に行かずばなるまい・・・・・(笑

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